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2015年の9月にはまだシェールガス生産はまだまだいけるという楽観的な見方が関係者の中にはあったが、統計にはっきりと北米のシェールガス生産がピークを超えたことが鮮明になってきた。米国経済を左右するエネルギー市場にはシェールガス減産の影が忍び寄るが投資家はそれに気がつかない。すべてのブームには終わりがある。シェールガスも例外ではない。
シェールガス生産トップ4社の合計生産量は2015年6月に27.9 Bcf/d(billion cubic feet per day)ピークを迎え、2015年12月には26.7 Bcf/dまで落ち込んだ。上のチャートが示すようにトップ4社(Barnett、Eagle Ford、Haynesville、Marcellus)のうち、BarnettとHaynesvilleは4年前の2011年にピークを迎えていたが、他の2社も遅れてピークを迎えたということである。
米国エネルギー情報局(EIA)によるとBarnetteの減産はピーク時の32%だとしているが、昨年の同社のリグ稼働数は実に84%の減少となる。Haynesvilleは2012年1月に日産7.2Bcf/dのピークを迎えたが現在は3.6Bcf/dで、掘削リグ数は57%減少となった。Haynesvilleは先週さらに5基を停止して現在はわずか18基が稼働しているのみとなった。
Eagle Fordのシェールガス生産は2015年7月にピークを迎え現在は6%減産の4.7Bcf/dで推移している。Eagle Fordの稼働リグ数も昨年から大幅に減少しているが、Eagle Fordが米国最大のシェールオイル掘削地域であるので、シェールガス減産の一般的傾向を顕著に表す結果となったためである。
Marcellusも2015年7月にピークを迎え現在は3%減産であるが、同社の生産りょう(15Bcf/d)は他のトップ3社合計(12.1Bcf/d)より大きく、トップ4
社合計の減産傾向を強めた。
注目すべき点はルイジアナとテキサスに拠点を持つMarcellusが特に急激な減産に追い込まれていることで落ち込みが緩やかなBarnette以外の2社もHaynesville同様に急激な減産傾向にある。
減産の理由は天然ガス価格の値崩れによって採算ラインを割り込んだためでガス価格が6$を切るとHaynesvilleの17%が採算性が取れるのみになる。したがってHaynesvilleで掘削を続ければほとんどが採算割れとなり、減産を余儀なくされる。生産業社は投資家から融資を受けているが生産設備投資に必要な分を除くと赤字となる。採算性が取れなくても掘削を続ける理由は融資返済のために資金調達が必要なためである。
天然ガス価格の落ち込みが続けばシェールガス事業の経済性はさらに悪化する。エネルギーが経済を支配すると考えレバシェールオイルにも減産傾向が顕著であることを踏まえると米国のエネルギー不足傾向は一層強まり、経済の落ち込みにつながる。今後米国の原油生産は2015年のピークから比べて2020年間でに30-40%落ち込み、2025年までに60-75%にも達するとみられる。このことで米国経済が大打撃を受けることは必至とみられる。
シェールオイルの最大のネックであった採算性が(天然ガス価格の落ち込みの影響をもろに受けて)命取りになった。供給過多でダブついているにもかかわらず、債務返済で止められないのが実情である。