迫り来る格差危機

19.01.2015

Photo: one.org

 

 世界の富裕層(1%)が集結するダボス会議の開催を前に、国際非政府組織オックスファムが2015年の報告書、「最も豊かな1%のための経済」を発表した。富裕層の1%が所有する富は、それ以外の99%の人々の総資産額を上回り、その中でも超富裕層の「グローバル・エリート」と呼ばれる62人は、世界人口の所得の低い50%、約36億人の総資産である1兆ドルを上回る、1.76兆ドルを所有している。

 

 

グローバルエリートー超富裕層

 現グローバル経済システム下では、1%により富、権力、特権が集中し、99%との格差は拡大する一方である。2010年からの5年間で、「グローバル・エリート」の総資産は44%も増加したのに対して、所得の低い50%の総資産は41%

減少した。格差は年々深刻化しているのが明らかである。

 

 

 

タックス・ヘイブンで脱税

 格差が拡大している一つの原因が、個人の富裕層や多国籍企業が脱税回避のために利用されるタックスヘイブン制度である。納税義務を果たさないことから、国の重要な収入源が減少、その他の99%の負担は増え、国はますます貧困や格差の問題を対処するのが困難となってきている。富裕層の個人資産の約7.6兆ドル(ドイツと英国の GNPを合わせた額を上回る)がタックスヘイブンにて保有されていると予想される。

 

 ダボス会議の会員会社の10社のうち9社は、タックスヘイブンにて資産を保有している。日本を含めて、ほとんどの先進国では、GNPに占める世帯収入と労働賃金は減少している一方、企業収益が占める割合は拡大しているが、タックスヘイブンの活用で税金回避している。

 

 米国では、2014年にフォーチュン500社のうち72%は約1.2兆ドルをタックスヘイブンの活用で、法人税逃れをしたとされる。日本の大企業も約55兆円と世界で第2位の規模である。

 

 

格差が世界経済の足を引っ張る

 このような格差の実態は社会の発展の阻害要因であるばかりか不安定化の原因になる。格差が顕著になれば人々は富裕層に嫉妬して共通意識が薄らぎ社会基盤が弱まる。アフリカに対する経済支援が効果をあげているとして貧困層が減少している、という考えは的外れだ。1990年から2010年までの期間に貧困撲滅運動が繰り返されたが、この期間に格差がこれほど広がらなかったら2億人が貧困層から抜け出せただろう。

 

 この20年間で貧困層が経済成長の恩恵を受けていたなら7億人が貧困層から抜け出していたであろう。そうであれば世界経済成長に大きな寄与をしたであろう。結局、超富裕層は底辺層から資産を吸い上げていることで世界経済の足を引っ張っているということを認識しなければならない。