Source: komatsuamerica
今世界が注目する第4次産業革命(Industry4.0)の原動力がIoT(Internet of Things)技術である。生産ラインの危機全てがネットに繋がれる時代がやってこようとしている。そのIoTを日本の企業が15年も前に実現していた、と聞いてピンとくる人もいるだろう。世界のKOMATSUが開発して2001年から稼動している遠隔建設機械モニタシステムである。
2011年時点で全世界に展開した62,000台の建設車両がリアルタイムに中央監視されている。いうまでもなく建設機械・建設車両は実体経済のバロメーターである。KOMTRAXはそれを24時間監視しているいわば景気の監視システムなのである。
KOMTRAXは車両に組み込んだGPSで位置を知り車両内ネットワークに繋ぎこまれた各種機器から運転状態を収集して、通信システムで中央監視室に位置情報とともに送られる。ここで注目される点は車両にLANを構築しそれぞれの機器を繋ぎ込むというまさにIoTを行っていることである。
建設車両の状態データを蓄積、カスタマや代理店に提供される。これによって保守管理が容易になりカスタマにきめの細かいサービスを提供できる。例えば車両に問題箇所が見つかると警告を発するので、カスタマと代理店に故障の前に連絡し、停止しないで済む(故障を未然に防ぐ)。
保守管理を徹底することで建設車両の稼働率が上がれば建設効率が上がり、建設期間を短縮することでコストが下がる。建設コストが下がれば利益が増えて建設主体企業の受注が増えて建設機材が盛んになる、というWIN-WINの関係でKOMATSUの利益も増すという仕組みだ。
Source: komatsuamerica
KOMTRAXが建設車両の問題を見出すと警告の処置内容が画面に表示されるので、オペレータに適切な点検指示が出される。またオイルやエレメントの交換時期が通知されるので、メンテナンス時期がはああくでき結果として安全な運用ができる。似たようなシステムは航空機エンジンにも見られるが、KOMTRAXは世界に先駆けてシステムを運用した。一般車の場合にも応用できる。
1日ごとの稼動時間、稼動時間帯、稼動地が1カ月分まとめて得られるため地域ごとの稼働率が把握できる。稼働率は経済指標として重要な意味を持つのでGDP数値や株価を操作しても真の経済状態がリアルタイムでわかってしまう。
KOMTRAXには鉱山向けの大型機械の保守管理に特化したKOMTRAX Plusがある。大型のブルドーザ、ダンプトラック、油圧ショベル、ホイールローダなどについてエンジンの排気温度などの詳細情報を監視することによって排気系統やエンジン内部磨耗などのトラブルを未然に防げる。これはF1のデータリンクと似た機能で、エンジン周りに配置された多数のセンサーデータから状態を診断しようとするもので、さらに細かい診断と故障予防が可能になる。
KOMTRAXの開発には米国KOMATSUの貢献があった。遠隔監視・診断ソフトの開発で先進的な米国の技術があってのものだが、その先見性には敬意を表したい。なお筆者の体験でいうと2000年代にKOMATSU以外に日本で計測機器メーカーが自社の機器にIPアドレスをつけてネット接続により制御する試みを行っていた。当然、インターネットを利用して会社は自社製品に制御ソフトウエアをダウンロードしたりデバグを行えた。10年以上前にIoTはKOMATSUをはじめ日本のメーカーには自然な流れだったのかもしれない。