Photo: web.physics.ucsb.edu
2011年の東日本大震災のM9.0、1960年のチリ地震はM9.5、1964年のアラスカ地震のM9.2などM8.0以上の巨大地震のメカニズムはプレートの沈み込みによるプレート境界型地震である。最近、物理学者がSupershear earthquake(超せん断波地震)と呼ぶ新しい概念を地震研究に持ち込んだ。超せん断波地震は一種の衝撃波で航空機が空中で音速を超える時に後方に引き起こす衝撃波が地殻内部で起こるようなものである。
超S波地震のメカニズムの特徴は伝搬速度の速さとその破壊力にある。このメカニズムでM9.5-M10の巨大地震が起これば一気に広範囲に影響が及び想像を超える破壊力で周辺地域を壊滅させる力を持っている。
超せん断波地震のメカニズムを提案したのはカリフォルニア大学バークレイ校の研究グループ。このメカニズムによれば衝撃波がS波より早く伝搬する。理論的には1970年代から存在が考えられていたが、ここ数年で実験室系で実証された。
実験では断層を模した2次元面モデルを一定速度でパルスが伝搬する様子を詳細に調べた。このモデルでは活断層の長さがミニチュア化されcm単位で表現される。上手に示されるように超せん断波が発生する活断層のずれでは直線的な衝撃波面(黄色い直線部分)が発生する。この衝撃波によって巨大な振幅の揺れを伴う巨大地震が発生する。
Source: pangea.stanford.edu
詳細は論文(Geophys. Res. Lett. 32, L03302)に発表されている。この研究結果は衝撃波面が超せん断波発生の有無に強く依存することを実験的に示した。超せん断波がなければ地震波は距離に従って急激に減衰し被害は局所的に収まるが超せん断波が発生すると断層の動きの縦横成分が遠方に高速に伝搬されるため被害が広範囲に及ぶ。
ミチオ・カクが警告するM10の巨大地震が起これば想像を絶する広範囲な地域が廃墟となると警告するのはこのためである。M10の巨大地震の破壊力は凄まじく北米で起これば北米全域が壊滅するだろうと警告している。そのエネルギーは蓄積されていていつ起こるかわからないが、そのような巨大地震は避けられないという。
地震予知は遅々として進まないが一方では太平洋岸を取り囲むリングオブファイアーに沿って火山活動と地震活動が活発化していることを考慮すれば、チリ地震や東日本大震災クラス、あるいはそれを上回るM10クラスの巨大地震がいつ起こっても不思議ではない。
大地震の記憶は時とともに薄れ安心しきった頃にこの新しいメカニズムの巨大地震が起こるかもしれない。