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カナダの工業デザイナー、チャールズ・ボンバルデイア氏は先にNY-東京を53分で結ぶマッハ10のロケットエンジン超音速旅客機「Skreemr」コンセプトを発表して話題になったが今度は同じく超音速だがラムジェットで離着陸に滑走路を使うマッハ24の「Antipode」コンセプトモデル(上のイラスト)を提案した。
ボンバルデイア氏が先に提案した乗客75名の「Skreemr」(下のイラスト)コンセプトでは母機の先端に取り付けられた磁気レールガンから射出され、ロケットエンジンに点火して成層圏に達しマッハ4まで加速したのちスクラムジェットエンジンでマッハ10で超音速飛行を行い滑空して着陸する。「Antipode」はラムジェットエンジンを装備して地上から離陸し、成層圏に到達して超音速飛行を行う。
一方「Antipode」は乗客10名の小型でNY-ロンドンを11分、NY-東京を22分で飛ぶ。「Antipode」の意味は地球の反対側(Antipode)まで超高速に移動できる、という意味でもちろんこれまでの民間・軍用ジェット機中最速となる。「Antidope」の主翼はロケットブースター一体型で航空で切り離され地上に戻る。(このアイデアはTVシリーズ「サンダーバード」において描かれている。)
しかしマッハ3のコンコルドを営業停止に追いやったソニックブームが最大の難関で、定常的な運行にはこの問題を避けては通れない。ボンバルデイア氏は別のエンジニア(Joseph Hazeltine)から、LPM(Long Penetration Mode)現象(注1)についてアドバイスを受けて、「Antipode」設計に取りいれた。。
(注1)NASAが開発中のソニックブームを低減する超音速飛行のジェットエンジンの動作原理。有限要素法の計算機シミュレーションにより効果が実証されている。進行方向に対して一点に高圧が発生してソニックブームを引き起こすのに対して、LPMでは先端から空気を取り込むことで進行方向に沿って高密度部分を分散させることでソニックブーム発生を低減する。
「Antipode」コンセプトのブースターロケットはBlue Originのロケットブースターのように飛行場に戻ってくる。マッハ5に達した後はラムジェットエンジンでマッハ24まで加速する(注2)。
(注2)無人機としてはマッハ20の極超音速機ファルコンHTV-2が開発中であるがこれまでの飛行実験は失敗に終わっている。そのほかにもオーロラと呼ばれる極超音速機(SR-91)の開発が進められているとされるが詳細は明らかにされていない。全米各地でソニックブームとみられる騒音が報告されているが、オーロラによるとする説もある。NASAのスクラムジェット極超音速機X-43Aは2004年にマッハ7を記録している。
「Skreemr」コンセプトと「Antipode」コンセプトのもっとも大きな差は後者の主翼にはロケットエンジンが取り付けられ、高度40,000フイート(1万2,000m)、マッハ5までの加速を行い、ロケットブースターをからラムジェットエンジンに切り替わってマッハ24まで加速する点である。
ソニックブーム発生の問題はLPM原理で抑えることができれば内陸部の騒音問題が解決できる。LPMによって超音速飛行中の空気抵抗による発熱も抑えられる。ただし乗客数10名で採算性を確保するためには運用するエアラインにも相当な覚悟が必要で、現実的にはビジネスジェットが現実的である。一方マッハ24となれば偵察機などの軍用にも能力を発揮できる。