Photo: antinuclear
国内の原子炉で発生した使用済み核燃料は、各原子炉サイトで一時保管されるが冷却されて一定の時間が経過した後、中間貯蔵施設に運ばれる。国内には再処理工場がないため使用済核燃料の再処理はフランスや英国の再処理施設で行われる。再処理で得られるプルトニウムやウラン235は核燃料として再利用されるが高速増殖炉を中心とした「核燃料サイクル」は事実上挫折している。
福島第一原発の汚染事故後には全原子炉が停止したが、より厳格な条件のもとで再稼働しつつある。今後もベース電源としての原子力への依存は続き極端な脱原発への転換はない。
過去の原子炉運転で国内の核廃棄物は英国、フランスに再処理を委託して、再利用核種を取り出した後にガラス化して地中で保管することになる。しかしその計画はまだ立てられていないし世界的にもフインランドのオンカロ廃棄物貯蔵施設が建設中であるのみで手がつけられていない。しかし先進国の原子炉の過半数は30-40年の運転をしているため蓄積された核廃棄物は限界に近い。
世界の原子力発電の満杯に近い使用済核燃料貯蔵は現実問題として原子炉の運転に重くのしかかり、大規模な貯蔵施設を作るべき時に来ているものの、人口密集地域は近郊に施設を整備できない。そこで国境を越えて国際貯蔵ハブを作る動きが出ている。
南オーストラリア核燃料サイクル協議会、Nuclear Fuel Cycle Royal Commission (NFCRC)が核燃料貯蔵ハブの誘致計画を提案した。公聴会では賛否両論が沸き起こっているが、南オーストラリアの財政難は深刻でハブを誘致すれば財政を立て直すことができる。
NFCRCの計画では世界中から高レベル放射性廃棄物およそ138,000トンを120年にわたり保管する。保管費用の総額は4450億ドル(日本円にしておよそ53.4兆円)の収入になる。
モンゴルを想定して日本と米国が進めた「包括的核燃料サイクル」はモンゴル政府の拒否により挫折したが、ハブ作りの動きは国境を越えて水面下で進行している。地震と降雨量が少ないというメリットを生かして南オーストラリアの地質学的な安全性は保証できそうだが、一方で不安材料はオーストラリアが高レベル放射性廃棄物のノウハウを持たない点である。
この分野の先進国であるフインランド、オンカロの技術が持ち込まれ規模を拡大した国際貯蔵ハブの実現が近いかもしれない。一方で日本国内では核燃料サイクルの見直しは道半ばで情報隠しの体質はそのままである。