Source: NASA
1990年4月にスペースシャトルで宇宙空間に浮かべられたハッブル宇宙望遠鏡は口径2.4mで地球を周る軌道に設置された最大・最高性能のものである。この間、数え切れない貴重な観測成果を上げたが中でも1994年にシューメーカー・レヴイ第9彗星が木星に衝突する瞬間を捉えた写真は世界的に有名である。
ハッブル望遠鏡は初期の技術的問題を解決し、宇宙で改良作業を受けて性能向上に成功したことで高分解能画像を得ることができた。ハッブル望遠鏡の後継機として2018年に上図の中央に示されたより口径の大きい(6.5m)マルチミラーのジェームズ・ウエッブ宇宙望遠鏡(JWST)が打ち上げを予定されている。
NASAはその後、広域赤外望遠鏡整備計画(WFIRST)に基づいて赤外領域の宇宙望遠鏡を2024年に予定した。ハッブル望遠鏡の100倍の視野を持つこの赤外宇宙望遠鏡を用いて太陽系外の惑星の観察やダークエネルギーに関する研究を行う。
天文学と軍事偵察は望遠鏡という手段を共有する。米国の偵察衛星を管轄するNRO(National Reconnaissance Office)が偵察目的に開発した望遠鏡の予備機をNASAに供与したが、この地上観測用の望遠鏡が高性能であるためWFIRSTに偵察衛星用の望遠鏡を使うことにした。
軍事偵察衛星の技術がハッブル宇宙望遠鏡の後継機に使われることになったのは皮肉であるが、新規に開発すると15億ドルの経費がかかるので、供与された望遠鏡を用いてコスト削減したというのが真相である。口径が2.4mなので分解能は変わらないが視野が100倍に広がるためWFIRSTは観測効率が飛躍的に向上する。
Photo: danielmarin.naukas
一方、JWSTを引き継ぐ大口径化による高分解能望遠鏡としては天文学研究大学連携(AURA)が提唱するHDST(High Definition Space Telescope)がある。こちらは口径11.7mのマルチミラー望遠鏡で当初の目的であるハッブル望遠鏡の後継機としてのマルチミラー概念はNASAのJWSTに引き継がれたが、AURAはそのあとの25年を担う次世代機としてHDSTを位置付けている。観察能力が130億光年のこの望遠鏡により138億年と考えられている宇宙の起源にほぼ近い領域が直接観察できるため、人類は宇宙の起源に迫るとともに太陽系外の惑星探査に役立てることができる。
ハッブル望遠鏡と同様にスーパーハッブル望遠鏡となる後継機は太陽と地球の重力が均衡を保つEarth-Sun Lwと呼ばれる位置に太陽の反対方向に置かれる。人間が移住できる地球型惑星探索のためのケプラー探査機と相補的にハッブル望遠鏡の後継機を用いることによって、人類が移り住める惑星探査にも拍車がかかる。宇宙の神秘を探るという科学的名目の裏には人類の移住先を探すという現実的な理由がある。火星探査も火星を起点にして惑星移住をするためのものである。人類の未来は地球上には見出せないことなのかもしれない。