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映画「オデッセイ」やNASAの火星ミッション、果ては移住の希望者を募る企業の出現でにわかに活気付いてきた感がある火星移住計画だが、片道18カ月という従来型ロケットがネックであった。
もちろん火星表面の薄い大気や重力と温度差の環境面で困難さはあるが、完全に閉じた生活環境を作れば地下にある氷床の水を分解して酸素を作り居住空間に酸素を供給することは難しくない。一旦居住空間に酸素が供給されれば人口太陽で生活環境を地球相当かあるいはそれ以上に持っていくことは可能だ。
ロシアは原子炉をエネルギー源(注1)とした衛星を打ち上げてきたが、この度国営の原子力企業、ロスアトムが原子力ロケットエンジンを開発し火星までの宇宙飛行の時間を6週間に短縮する技術開発を開始した。
(注1)原子力エネルギーを用いる場合、電源には核崩壊エネルギーから熱電素子で電気を取り出す「原子力バッテリー」が衛星には用いられたが、原子炉を小型化して熱エネルギーを用いる研究は米ソが競争で行った経緯がある。
従来型の化学物質の燃焼で推力を得るロケットエンジンは燃焼時間に制約があるため、決まった軌道しか取れないが、原子力ロケットは燃焼時間に制約がないため自由に航行軌道を変えることが可能となる。ロスアトムによれば火星まで1年半の飛行時間を1カ月から1.5カ月に短縮するロケットエンジンを2018年に試験を行う予定である。下の図のように炉心の熱源をタービンでノズルから吹き出す構造で水素気体を圧縮して炉心に送り込み高温で燃焼させる簡単な構造であるが、送り込む水素は冷却材も兼ねているので水素供給の制御が難しい。この形はNASAが開発しようとしたが実用にはならなかった。
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もう一つの可能性はNASAを初め世界中で開発が進められている電磁プラズマ推進(MPD-drive)も「はやぶさ」などで実用化しているイオンエンジンも電力を必要とする。特に前者では大電力が必要となるため原子炉で発電した電力を投入すれば実用になるので、今後の原子力の宇宙応用に期待が高まる。宇宙空間なら核燃料廃棄や汚染の問題がない。
NASAも原子力ロケットが火星ミッションの鍵と考え、ロスアトムに対抗して開発に意欲を燃やすが、原子力技術の蓄積の差は明らかで、ロスアトムが有利な立場にある。何れにしても巨額な予算をつぎ込むことになるが仮に1カ月で火星行きが可能になったとして、一般の国民のどの程度が地球脱出を希望するであろうか。火星行きを希望するほど地球環境が悪化することを見越してのことだとしたら背筋が寒くなる。
火星移住者は希望者が殺到しているが今の所片道飛行となり後に続く移住者のためのインフラ作りの先遣隊となる。それでも地球に将来を見出せない若者が多いということなのかもしれない。