環境に優しいハイブリッド飛行船が完成

6.03.2016

ハイブリッドの21世紀

21世紀はハイブリッドの世紀である。ハイブリッド車のエンジンで発電しバッテリーに蓄電しモーターを動かして高燃費を実現するというアイデアはジェット旅客機に及び、タービンで発電しバッテリーに充電、モーターでターボファンを回転させるE-fanと呼ばれるハイブリッドエンジンはロールスロイス社とエアバスが研究開発を行っている。その他にも複合材料が身の回りに溢れハイブリッド技術なくしては現代社会が成り立たないほどである。

 

エアーランダー(Air Landerハイブリッド飛行船(注1)は全長91mで世界最大の航空機カテゴリに分類される。ノースロップ社とともにハイブリッド飛行船を開発した企業(ハイブリッド・エア・ビークルズ社)はイギリス政府から補助金を受けて発展型のAirlanderの量産を計画している。同機は胴体の組み立てが終わって胴体に主翼が取り付け、来月の完成とテスト飛行を予定している。

 

(注1)ハイブリッド飛行機(Hybrid Air Vehicle)には飛行船と飛行機のハイブリッドの他に車と飛行機などが含まれる。ハイブリッド飛行船はもともと軍用目的に開発されたものであるが、民間にも需要が見込まれイブリッド・エア・ビークルズ社は量産して販売することになった。

 

 

エアーランダー

Air Landerは全長92m、全幅34m、50トンを積載して6,000mの高さで2,500kmの航続距離を持つ。飛行船のため最大速度は150km/hであるがヘリウム40%で安全に長時間飛行できる特性を生かして、現在はヘリコプターで行なっている高圧線の監視、保守、高層ビルの災害救難、交通監視、離島の監視、海峡監視、港の海上交通監視、自然環境の監視、地震災害、通信の中継の救難など多くの民間需要がある。

 

ジェット機の騒音や環境汚染が問題になる中で環境に優しい空の移動手段であるハイブリッド飛行船で地上の景色を楽しみながらゆったり旅を楽しめるので、欧州や日本のように限られた面積の国々では車やヘリコプターに変わる都市間移動手段としても期待されている。

 

通常の飛行船とハイブリッド飛行船の違いは前者が飛行船を3個束ねた構造で横幅が広く主翼とテイルトファンを持つこと。垂直離着陸が可能であると同時に水平飛行では胴体と主翼の揚力が得られる点は飛行機に近い。

 

“Flying Bum”と呼ばれるハイブリッド飛行船(Air Lander 10)は価格が11億円の世界最大のエアクラフトとなる。揚力の60%が飛行船、40%を飛行機の原理に依存するハイブリッド化により飛行船のイメージは払拭されることになる。従来技術に変わる技術を”Alternative Technology”と呼ぶが、ハイブリッドで始った21世紀は従来技術を新技術が置き換える世紀になるだろう。