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車、工場、隣家の発する騒音被害が及ぼす健康被害が認識されつつある。騒音のない環境では突然の車の音で起こされるが、外に出ると人間の持つ適応能力が発揮されてそうならない。しかし騒音は集中力を妨げたり社会的行動に影響し迷惑となることもある。
職業的及び環境騒音についての研究によれば騒音により高血圧を誘発する場合があるが、地域研究的には騒音と健康被害(循環器障害)の関連は薄いとされている。例えば航空機や道路からの騒音によって心理的な影響はあるが明確な健康被害に結びつくことはない。しかし工業的、地域的研究の結果、騒音によりカテコールアミン分布が多くなることがわかってきた。
幼児に対して航空機騒音は読書時の集中力を失わせ、記憶障害になったり血圧を上げることがある。将来は騒音の健康被害を明らかにし対策を行う必要がある。
85-90 dBAの騒音を長期にわたって受けると聴覚障害になる。これは音波が聴覚器官に直接的に与える損傷のためであるが、環境騒音のレベルはそれよりはるかに小さいため音波による物理的効果と考えられない(British Medical Bulletin)。
音圧レベルの小さい騒音が与える健康被害とは
音波エネルギーによる直接的なもの以外に、人間の行動と会話に影響を与える「迷惑」となり発生するストレスが引き起こす副次的な結構被害であると考えられている。そのため騒音の詳細、強度、振動数、複雑さ、持続時間、原因などに強く依存するのである。
騒音による安眠の妨げは睡眠の段階変化の頻度や目覚めの頻度に現れる。研究によれば、50dBA以上の騒音の回数が50回を超えると騒音による安眠の妨げが顕著になるという。睡眠中の騒音による影響でREM状態の頻度は高まり、血圧と脈拍が高まり体を頻繁に動かすようになる。一方で家の外では騒音と不眠の関係ははっきりしていない。
騒音は人間のスピーチ能力を低下させるが、読書や記憶能力には影響が少ない。騒音は自立神経系に作用して脈拍と血圧が上がる。騒音が精神障害が引き起こすと考えられてきたが、明確な関係は確立していない。人間が騒音に接すると環境に適応するため騒音の評価基準が変化するため関連を明確にできないと考えられる。
騒音が人間の「迷惑」となり安眠を妨げ認識能力に影響を与えることは確かで職業によっては高血圧の原因となる。多くの場合、騒音により人間の感じる「迷惑」はQL(Quality of Life)を左右する。精神的あるいは肉体的障害リスクと環境騒音との関連性は低いが、人間の適応能力のために環境騒音と健康被害の相関は複雑化するため相関がないと結論付けることはできない。
不快な低周波騒音
人間の聞こえる周波数は20Hz異常であるがそれ以下の低周波騒音が健康被害を引き起こすことが注目されている。風力発電の回転音や米国でボルボ車が発する低周波雑音が話題となった。聴覚領域を超える低周波や逆に超音波が不快感をもたらす。環境騒音にこれらが含まれる場合は少ないが、地域によってまた特定車種を運転するドライバーへの長期的作用を考慮して騒音の周波数帯を拡大して評価・議論する必要がある。
ジェット機の逆推進時に発生する200Hz以下の低周波雑音に関する報告書によると、空港から1000m以内の住民に悪影響があるとしている。VOLVO車の雑音については公式報告書が詳しい。低周波雑音(33Hz)を含む風力発電タービンの雑音特性については資料を参照のこと。可聴域の音波を兵器に利用する試み(LRAD: Long bRange Acustic Device)は2.1-3.1kHzの音波を発射して不快にさせ戦意を喪失させるものだが、これとは別にソ連は1960年代に低周波騒音を兵器に応用した。