米国テキサス州のエルパソから約12キロ離れた、メキシコの「Anapra」(注1)と呼ばれる地区に過激派組織のISISキャンプがあることが、米国Judicial Watch、メキシコ軍とメキシコ警察によって確認された。
Judicial Watchのレポートによると、メキシコのChihuahua州に米国国境に近い「Anapra」(下の地図)にキャンプ、ニューメキシコに近いPuerto Palomasにアジトがあることが判明した。メキシコ軍とメキシコ警察はアラビア語とウルドゥー語で書かれた書類やエルパソにある第1機甲師団があるフォートブリス (Fort Bliss)(注2)に関するある「計画」の書類のほか、イスラム教徒が礼拝の時に使う敷物などを押収したとされる。
(注1)Anapra
メキシコ側からアメリカへの不法移民は毎年100万人以上にのぼる。AnapraはJuarez近郊にありRio Grande川に面したメキシコで最貧困地域である。この地域はJuarezカルテルの勢力下にある。
(注2)Fort Bliss
テキサス州エルパソに本部を置くテキサス州とニューメキシコ州の全米で2番目の規模の陸軍軍事拠点。エルパソ情報センターや北米参謀本部が置かれる重要な基地であるが故に、大統領が軍を激励するのに使われることが多い。下の写真。
米国のJudicial Watchは、保守派の非営利財団でこれまで数々の政治家や政府関係者の汚職や政府介入が疑われる不正事件などを暴いてきた実績を持つ。「だれもが法を超越しない、だれもが法に従う」を原則とし、調査や疑惑の個人、団体、政府を提訴してきた。
ISIS キャンプがあるAnapraは、Fuentes カルテル(注3)と Barrio Aztecaギャング(注4)によって支配されている危険地域である。そのため、軍や警察の地域での介入は限定されている。米軍の支援がなければ、ISISキャンプの破壊とテロリストの確保は難しいとされる。
さらに、メキシコの情報当局によると、メキシコから米国に密入国や人身売買を行っている密輸組織「コヨーテ」(注5)はカルテルの管理下にあり、ISISテロリストの米国への密入国を行っていることが明らかとなった。密入国は、Santa TeresaからニューメキシコのSunland ParkとAcalaからテキサスのFort Hancockの2つのルートがあるとされる。
この2つの国境ポイントは、取り締まりに十分な国境警備隊と州警察の人員が不足している場所として、これまでカルテルが麻薬の密入を行ってきた場所でもある。
(注3)Fuentes カルテル
アメリカとの国境沿いのテキサス州とニューメキシコ州との国境地帯に暗躍する麻薬カルテルJuarezのボス、Vicente Carrillo Fuentesが率いるグループ。Fuentesは拘束されたが勢いはそのままである。国境カルテルの勢力範囲は下の図に示したようになる。主に独立した4つのカルテルと連合組織(Federation)でメキシコを網羅する。Vicente Carrillo Fuentesと(注4)のJoaquin GUZZMAN-Loeraの名前がある。
(注4)Barrio Aztecaギャング
Barrio Aztecaはテキサス州エルパソの刑務所で広域囚人の収容により、アメリカ人とメキシコ人によって結成されたギャングで、全員がアメリカ市民権を持ち国境を自由に越える。全米で3,000人という最も勢力が強いギャングのひとつとなっている。2008年からJuarezカルテルと手を組み、麻薬密輸ルートをJoaquin GUZZMAN-Loera率いるSinaloa から共同で防衛することとなった。
(注5)密輸組織コヨーテ
ロサンジェルスで結成されたもともと中南米不法移民のための組織だったがメキシコで勢力を伸ばし、国境警備隊を襲撃するほどになった。FBIが特別チームで対応している。