TPPをめぐる日米閣僚協議が始まった。米国と日本の思惑の隔たりはコメや自動車、自動車部品などで、両国とも自国の産業と農業の保護政策が真っ向から対立する構造だ。しかし農業については自国の農業保護とは別の観点があることは報道されない。
TPPで米国は主食用の米を年間17万5,000トン、加工用などをあわせて20万トン以上、輸入量を増やすよう要求している。ところで米国の農作物(小麦、トウモロコシ、大豆、砂糖)の95%がGMOである。米についてはGMO化の確証はないが、現在試験中とのことなので近い将来はリストに加わると思われる。
GMOの健康被害は欧州で問題となっているが、病気との因果関係については決着がついていないので、目をつぶるとしてもGMOに深く関わる別の問題が話題となっている。
MITで食品と病気の関係を30年以上に渡って調べて来たStephanie Seneff博士が次のような発表をした。「GMOには欠かせないモンサント社の看板除草剤「ラウンドアップ」(注)の成分であるグリホサートイソプロピルアミン塩(グリシンのN原子にリン酸メチル基が配位)に、子供の自閉症発生率と相関が著しくこのままで行けば2025年には子供の2人に1人は自閉症になる。」
(注)ラウンドアップ
強力な除草剤であるので自然の作物に使用するとそれ自身に影響がある。そこでGMO農作物では遺伝子工学を用いて、ラウンドアップに対して植物を耐性化させる。つまりGMO農産物とラウンドアップは一緒に使用される。GMO農産物の種子は耐性を持つが同時に使用するラウンドアップを使用する必要が生じる。
Seneff博士によればグリホサート(glyphosate)がGMO農作物つまりアメリカ産のほぼ全ての農作物)に微量に含まれることが問題だと指摘する。トウモロコシに混入したものはコーンシロップを通じて飴やソフトドリンクを、シリアルやチップ類を通じて汚染し、これらを摂取する子供に蓄積されていくという。
ひとつひとつの食品に含まれるグリホサートは基準値があるが、GMO農作物の摂取の蓄積により体内濃度が基準値を超えて高くなる。GMO農場の周辺に生まれた子供の自閉症発生率は60%増加する。政府の調査では食品に含まれる殺虫剤含有率は基準値を超えないとしたが、除草剤の含有については調べていない。
モンサントの説明は植物の芳香系アミノ酸をつくる経路をラウンドアップが遮断するので植物が枯れるが、人間はこの経路を持たないので安全としている。またSeneff博士によればグリホサートは体内のアミノ酸をつくるバクテリアへ影響を通して間接的に人間に影響がある、としている。しかしグリホサートと自閉症発生率の因果関係がはっきり示している。欧州に比べてアメリカ人の体内のグリホサートの濃度は10倍高いという。TPPの是非に関して、ほんとうは日本に流れ込むGMO食品の脅威を議論すべきなのだ。