シェールガス・オイル掘削のリスクまとめ

Apr. 16, 2015

 

シェール革命とともに2009年のオバマが目指したガス・オイル掘削はまたたくまにアメリカをエネルギー資源輸出国とするほどの勢いで全米に広がった。これが8カ月継続しいまなお続く原油価格下落の一因となっている。


 しかしシェールオイルの歴史は古く、深刻な問題点が提起されていたが最近になり現実化した。ここでは掘削によりもたらされる環境破壊リスクについてまとめておく。



 下の図は高圧破砕というシェールオイル独特の掘削により生じるリスクを模式的に示した。それらをまとめると以下のようになる。高圧破砕とはHydrolic Fracturingと呼ばれるもので、砂を含んだ高圧水を硬いシェール岩盤に吹き付けてクラックを生じさせ、できた割れ目が塞がらないように化学物質を使う。割れ目には砂が入り込んで「楔」となりが、それを固定するためである接着剤の成分が企業秘密であるようにこの化学物質の一部は非公開である。



 

(1) 掘削途中でメタンガス(シェールガス主成分)の地表への放出(注1)

(2) リグの爆発(メタンガス漏れ等)(注2)

(3) 高圧破砕で使用した化学物質が混じった汚染水は再利用のために貯蔵される。その汚染水が漏れだして地下水を汚染。(注3)

(4) 地下水にメタンガスがとけ込む

(5) 水平に堀った高圧破砕とガス・オイル抽出トンネルと地下にたまった水で岩盤が弱く地震を引き起こす(注4)

 

 

(注1)汚染水が掘削のパイプから直接、漏れた報告はない。

(注2)漏れだしたメタンは空気中に拡散するが局所的な濃度が高まり、健康被害リスクがある。

(注3)化学物質にはイオウ化合物、重金属、人体に有害な炭素系物質が含まれる。

(注4)シェール層は1000m以上と地下水レベルより遥かに深いため、掘削しているシェール層から水漏れが起こる可能性は低い。掘削手順で縦穴を掘る際に「ケーシング」という作業で土壌への水漏れを防ぐセメント外壁をつくることが効果的に漏れを防いでいる。

 

 

これまで(1)、(4)は報告されており、特に井戸水が発火したことで住民が訴訟を起こしている。またメタンガスの温室効果は大きい。

(5)オクラホマ州は油田の周囲を震源として多発しており、科学的に掘削との関連が明らかになっている。地下に溜まった水は断層を滑り易くしエネルギー放出頻度が高まるので小規模(M3)の地震が多発する。

 

 環境被害はこれからの操業が続けば深刻化する。減産に踏み切れない理由については別記事を参照のこと。今後の予想としてリグ数の急激な減少でますます掘削拠点は集約するので、Sweet Spot地域では環境汚染と地震の多発に悩まされるだろう。