広がり続ける富の格差

Oct. 21, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界で貧富の格差が拡大し、今では世界の富の48%がわずか1%の最富裕層によって保有されている。また上位10%の富裕層が87%の富を保有しているのに対し、世界の下位層の69.8%は2.9%しか保有していない。いかにごく一部の人たちに富が集中しているかがよくわかる。

 この結果は、クレディ・スイス証券の最新調査によるもので、今年1月に国際非政府組織(NGO)のオックスファムも同様の内容の報告書を発表している。特に衝撃的なのは、富裕層の中でも、超富裕層の「グロバル・エリート」とも呼ばれている85人の総資産が世界人口のおよそ半分の35億人分に相当する富を独占、貧富の格差の拡大に貢献していることである。

 世界中で起きている貧富の格差はリーマン・ショック以降、特にアメリカで拡大した。それはアメリカで始まった量的金融緩和政策(QE)と深く関係している。量的金融緩和により、低金利と手元流動性の増大で金融機関や投資家は積極的に投資を行なった。低迷していた米株式は2009年から2014年10月まで、調整がないまま、2.65倍も上昇、資産価格は上昇したのである。より多くの資産をもつ富裕層だけが、より資産を増やし、量的金融緩和の恩恵を受けたのである。

 世界の富が限られた富裕層に集中していることに加えて、国の総資産と総所得(wealth to income ratio)の比率、つまり、国全体の資本の蓄積額と国民の所得額の比率が上昇していることにも注目しなければならない。資本の蓄積のスピードが総所得の上昇より速いことを意味する。つまり、資本の収益率が総所得の成長率より高いのである。この比率が高くなるほど、経済が不安定になる一方で、資産が集中している最富裕層がもつ政治的影響力はより強くなるとされている。

 2000年のITバブルや2008年のリーマン・ショックの前、総資産と総所得比率は6倍以上に上昇した。バブル崩壊後、総資産と総所得の比率は4から5倍まで下がった。だが現在、この比率は6.5倍にまで上昇、世界恐慌の起きる前と同じ水準まで上昇しているため、株式がバブル状態にあり、バブル崩壊が近いことを示唆している。経済が不況に向かうことが避けられないことを警告している。