米国の脅威となるサイバー攻撃

Sep. 14, 2015

Photo: Huffingtonpost


 サイバースペースにおけるハッキング攻撃は拡大し戦場は国家レベルの全面戦争に近ずいている。サイバー攻撃の実態は公表されていないため、その実態の把握は容易ではない。しかし民間企業、金融機関のほか、軍事施設、国立研究所や政府機関における被害は日ごとに増えている。このほど情報公開法の適応により、米国の USA Today紙は米国でのサイバー攻撃の実態の一部資料を入手、公表した。



 今年7月に発覚した米国人事管理局のサイバー・ハッキングで、2210万人の公務員個人情報の流出は米国政府に衝撃を与えた。社会保障番号のほか、現職、職務評価、個人経歴、指紋を含む個人の認識情報などがハッキングされたのである。2014年の一年間だけでも、政府機関は61,000件のサイバー・ハッキングが報告されている。今では国家情報局は、国家安全保障上の最大の脅威をテロではなく、サイバー攻撃と位置づけている。


 今回公表された資料では、2010~ 2014年にアメリカエネルギー省は、1131件のサイバー攻撃を受け、そのうち159件はコンピューター・システムの潜入に成功、53件はなんらかの情報の流出があったとされる。内容の詳細は調査中とのことで公表されなかった。最もサイバー攻撃を受けたのは、エネルギー省の科学技術系の研究所を含む科学部に続き、国家核安全保障局であった。



Photo: South China Morning Post


 エネルギー省は全米における送電網、原子力を中心とする科学技術の研究と開発、核安全保障、核兵器の製造と管理を担当している。そのため、サイバー攻撃はアメリカの安全保障が揺らぐほどの脅威となる。具体的には、送電網や基盤インフラ、政府のエネルギー関連ネットワークなどハッキングによる機能停止や崩壊、原子力技術の開発や核兵器の備蓄管理に関する情報流出が考えられる。

 

 送電網や基盤インフラに関しては、数年前からその脆弱性、サイバー攻撃の脅威が指摘されていた。ほとんどの電力会社は未だに1970年代の技術に頼っており、老朽化したインフラの近代化とサイバー攻撃から防御できるシステムの導入には莫大な設備投資が必要とされるため、これまで米国政府は積極的な対策をとってこなかった。


 

 ブッシュ政権の「対テロ対策」の担当であったリチャード・クラークは2009年にアメリカの送電網の中心コントロール・システムが中国によりサイバー・ハッキングされたことを2012年に暴露している。電力供給の一時停止や完全なシステムのシャットダウンが可能なソフトウェアが投入されていたことが、後に発覚したのである。

 

 

 米シンクタンクの安全保障政策センターのフレッド・フライツは、送電網の機能停止や破壊は社会混乱を引き起こし、送電網とコンピューター・ネットワーク・システムの復旧には数年の時間がかかるため、最初の1年で人口の90%は死亡するとアメリカがおかれている脅威の深刻さを指摘している。

 

 

Photo: Secure World