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中東、特にイラクとシリアからの移民が急増、移民問題が深刻化しているなか、イラクとシリア市民を対象とした、世論調査が行われ、その結果が公表された。調査によると、4年間続いているシリアの内戦下で、シリア国民の65%、イラク国民の75%は、平和的に共存できると考えている。
世論調査機関、英国のORB InternationalとイラクのIIACSSによる世論調査は、イラクでは2004年、シリアでは2013年から幅広い地域における世論の動向を調査してきた。世界のメディアが報道しない国民レベルの状況がみえてくる、興味深い内容であると共に、中東における紛争の解決に役立つ内容でもある。以下がその調査結果である。
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共存
イラク:75%の国民は政治的・宗教的対立を乗り越えて、1つの国として共存できると答えた。
シリア:65%は共存が可能と考えている。
国の分裂
イラク:74%は内戦を終結するために、国をそれぞれシーア派、スンニ派、ISIL支配下に分裂することに反対。
シリア:70%はアサド政権のアラウィ派とシーア派、シリア国民の80%と言われている反対制派のスンニ派とISIL支配下の3つに国を分裂することに反対。
アメリカ・NATOによる空爆
イラク:44%は支持、56%は反対(スンニ派の52%、シーア派の61%が反対で、宗教的対立があるなか、宗教派を超えて大多数の国民はアメリカ主導の有志連合軍による空爆に反対している)
シリア:47%は支持、49%は反対
情勢の悪化
イラク:66%は国の方向性が間違っていると考え、67%は紛争が始まる2年前の生活に戻りたいと答えた。ISIL支配下の地域では、71%が生活環境の悪化を訴えた。
シリア:40%はアサド政権下の生活の方がいいと答え、今の状況での生活をいいと思う国民は21%であった。35%は生活環境がさほど変わらないと回答した。
ISIL
ISIL が勢力と支配領土を拡大するなか、なぜこのような過激派組織が存在しているのかが、イラクやシリア国民の間で疑問視されてきた。
イラク:ISILの存在が国全体に与える影響について、良い影響を及ぼしていると答えたのがわずか5%であった。
シリア:22%がなんらかのポジティブな影響があると答えた。
イラクとシリアでは、85%と81%はISILが外国/アメリカにより作られた組織と考えている。
イラクとシリアにおける一般市民の生活状況が悪化していることは、調査からでも明らかである。シリアのアサド政権の交代を求めるのではなく、アサド政権とロシアを含む米国・NATOの協力体制で、ISIL撲滅を共同の軍事目的にすることで、内戦の終結と地域の安定、移民問題の緩和が得られると考える。