先進各国の自動車市場では、燃費の良い中・小型車、環境にやさしい燃料電池車、HV、EVの売上が増加を続けている。排出ガスを減らすという環境対策になるうえ、消費者にとってなりよりも、燃費が安くしたいからである。一方では、ガソリン消費が伸び悩むか、低下すると、各国は道路財源を維持できなくなる財源不足の状況に陥り、苦肉の策を講じる事になる。
日本ではこれまで、ガソリン税以外にも、自動車取得税や重量税、高速道路や有料道路の料金が道路財源を負担してきた。均一料金であった首都高速は財源を増やす目的で、走行距離に応じて料金を決める方式に変更するなど、財源を増やす手段はとってきた。しかし、財源のかなりの部分をガソリン税に依存しているため、「走行距離課税」制度の導入が日本を含め世界各国で検討されている。
アメリカでは、2009年から自動車燃料税方式は長期的には持続不可能であると結論を出した報告書の発表により、走行距離課税の議論が本格的に始まった。現在全米17州で実験的に導入されている。新車には、走行距離をモニターし、各州の道路局に情報が送られるGPS付きの「ブラック・ボックス」の設置を義務づける法案も検討されている。
アメリカのVMT
2020年に導入が検討されているVMT fee ( vehicle miles traveled
fee)と呼ばれる走行距離課税は、走行距離に応じた課税とし、道路利用者が負担することが原則となる。ガソリン税は、CO2排出に対する課税として、継続されるので、実質的には増税である。GPS付きの車載器を使い、走行距離、使用道路が高速か一般道路であるか、走行区間の時間別の混雑度、利用車種(エコカーであるか)などの情報を組み合わせた走行距離料金を基準とし、走行距離課税が計算される。走行距離の情報は地域の道路局に自動的に発信され、一ヶ月分の料金情報がSMSを使って携帯電話に自動的に送信、後日、銀行口座からの引き落とし、またはコンビニや道路局窓口で支払うシステムとなる。
走行距離課税制度への変更に関連して、自動車保険会社も保険料の基準の変更を検討している。カリフォルニア州では、保険加入者の車から保険会社に走行距離の情報が送信するトラッキング装置をOBD-llに設置し、基本料に走行距離料金(2〜5セント/マイル)を加算するシステムが導入された。走行距離だけでなく、目的地までかかった時間、使ったルート、使用したガソリン量に加えて、赤信号を走行した、駐車禁止の場所での駐車、スピード違反など走行中の全ての情報が記録として残ることになる。その情報を元に、今後交通違反取り締まりに使われることは時間の問題である。
プライバシーの問題と個人情報の流出が十分検討されないまま、課税だけが重視されるのは問題である。ますます監視社会になる一方、経済が悪化しているにもかかわらず、経済成長期と同じ財源を国民に求めるのは、問題である。税金の負担が増すなか、国民の生活状況は悪化するばかりである。