Photo: UPI
ロシアのモスクワで8月25日からロシアが誇る最新の航空機材や防衛産業向けのハイテック製品が披露されるMAKS国際航空ショーが開催されている。去年からウクライナを巡って欧米とロシアが対立、それぞれが経済制裁を課し合う事態が続いている。対立の終わりが見えないなか、軍事産業だけは友好的関係が存在しているのが皮肉である。写真はMAKS国際航空ショーにヨルダンのアブドゥッラー 2世国王を招待したプーチン大統領。
MAKS国際航空ショー2015
今年は40カ国から150社が展示参加している。その内、25カ国はロシアに経済制裁を実施している国からである。EUからは、オーストリア、ベルギー、英国、ドイツ、フランス、スイス、デンマーク、イタリア、ウクライナ、マケドニアなどが参加。その他にもトルコ、イスラエル、インド、イラン、南アフリカ、カナダ、そうして最も多い11企業と団体が展示参加しているアメリカ。
中東・OPEC諸国首脳が集結
今回初めて、中東・OPEC諸国の首脳が一度に集まるのが興味深い。モスクワで航空ショーを観察した後に、プーチン大統領と首脳会議が行われる予定である。
8月25日 サウジアラビアのサルマン国王
8月26日 ヨルダンのアブドゥッラー 2世国王
アラブ首長国連邦のムハンマド・ビン・ザーイド・アールナヒヤーン皇太子
エジプトのシーシー大統領
イランのエブテカール副大統領
シリア代表団
もちろんロシアと中東・OPEC諸国で武器取引が行われることは確実である。武器調達の面で米国離れが起きている。
Image: The Economist
米国離れ
米国との中東政策の違いによる不満や不信から、今年になってサウジアラビアはロシアや中国との新たな同盟関係を重要視する外交政策をとっている。ロシアも中東での影響力を拡大している。ロシアは中東における原子力発電所の建設と開発に関する協定をトルコ、ヨルダン、アラブ首長国連邦、エジプト、イラン、サウジアラビアと結んでいる。中東における各国のエネルギ政策の方向性に大きく影響を与えているとも言える。
原油価格がWTIで39ドル、Brentで43ドルと下落している時期に世界の原油価格の方向性に主導権をもつサウジアラビアと主要OPEC諸国がOPEC総会以外で集まるのは珍しいことである。
世界の原油価格の方向性に主導権をもつサウジアラビアと主要OPEC諸国がOPEC総会以外で集まるのは珍しいことである。
今回のプーチン大統領と中東・OPEC諸国の首脳との対談で、原油価格の下落を巡る対応策が打ち出される可能性は高い。
これまで世界の原油売買の決済は米国ドルに限られてきた。もしこのシステムを維持しない、ロシアルーブルと中国人民元での決済を可能とするシステムの導入に踏み切ることになれば、世界は大きく変わることになる。世界の基軸通過である米ドルは最大の危機を迎える。
Photo: PressTV
ハイライトは最新機PAK FA
写真は最新のステルス戦闘機PAK FAのフライバイ(注1)。正式名はT-50であるが西側諸国はPAK FAと呼ぶ。現在はまだ飛行試験中だが積極的にエアショーでロシア製軍用機の看板として高い技術力をアピールしている。ステルス戦闘機といえばF22ラプターといわれるが、米軍が最大配備を狙うF35は相次ぐ生産の遅れと戦闘能力が疑問視されている。
PAK FAは傑作機Su35の流れを汲むスホーイの力作で、2010年1月に初飛行、2016年から本格生産が予定されている。Su35で立証された高い運動性能とステルス能力に加えて最新のアビオニクスでその戦闘力はF22に勝るともいわれる。試験飛行期間中にエアショーに出展することはロシアの威信をかけたこの戦闘機に関して自信がうかがわれる、と同時にガス輸出での打撃を軍事輸出で取り戻そうとする姿勢が示されたととるべきかもしれない。
(注1)ロシアの航空ショーあるいはファーンボロなど西側諸国の航空ショーのロシア出展の目玉は超低空飛行のフライバイ。スホーイ戦闘機の能力とパイロットの技術力の高さをみせつけるが、墜落の危険と紙一重でもある。有名な失速間際に機首をあげてそのまま垂直に急上昇するプガチョフ・コブラはSu35など極端に水力の高い戦闘機に許された曲芸で、ロシア戦闘機の能力をみせつける。なおロシアエアショーのもうひとつの特徴であったコンパニオンたちの過激なミニスカートは禁止になった。