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中国人民元が国際通貨基金(IMF)特別引出権(Special Drawing Rights: SDR)の構成通貨に10月にも採用されると思われていた。中国は人民元のSDR採用に向けて、2009年から人民元の国際化や外交活動を積極的に行ってきた。しかし、IMFは少なくても2016年9月30日までは採用の可能性はないとの見解を突然示した。
SDRはIMFの加盟国が資金を引き出す際に使う一種の基準通貨である。通貨バスケットは米ドルが41.9%、ユーロが37.4%、英ポンドが11.3%、日本円が9.4%で構成されている。SDRに編入されれば、基軸通貨と認定される。
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人民元の採用は2010年に初めて検討され、却下された。それから5年、人民元の国際化は進み、国際銀行間通信協会(SWIFT)と国際決済銀行(BIS)によると、人民元は決済通貨として世界5位、国際貿易決済では世界2位、外国為替取引量では世界10位と急速に国際通貨としての価値を上げてきた。
10月にIMF理事会は、5年ごとのSDR構成通貨の見直しを実施する予定であった。だがその前に、人民元の採用決定の延期を推進するIMFスタッフ報告が発表され、人民元の採用決定を2016年まで延期することが明らかとなったのである。
G7財務相会議で合意
人民元のSDR採用は5月に開催されたG7財務相会議で参加国の間で採用時期は合意に至らなかったが、採用に関しては合意されていた。これは、人民元が主要な国際通貨としての価値を認めたことを意味する。だが、最終的な判断はIMFの理事会で決定されることになっていた。
IMF加盟国の間では、米国と日本は人民元の採用を慎重に議論する必要があるとの立場をとってきた。一方、フランス、ドイツ、英国、イタリアは人民元の早期SDR採用を支持している。IMFの中で中国の投票権は3.82%に対して、米国と日本は投票権の23%を握っていることから、人民元の採用の決定の難しさは懸念されていた。それは、将来人民元が米国ドルに代わって世界の基軸通貨となり、IMFと世界の金融市場における中国の影響力が拡大するといった脅威に米国が直面しているからである。
人民元がSDRに採用される条件
今回のIMF報告のなかでは、SDR採用の条件として、人民元が国際決済で活発に利用されているという条件は果たしているが、人民元の「自由に使用可能」という条件を満たしていないことが注目された。人民元の為替レートは管理フロート制にあることが問題となった。つまり、中国政府は変動の上限幅を設定しているため、自由に変動する仕組みになっていないことが主な理由で、SDR採用が延期となった。
中国元がSDRに採用されると
SDRは現実には流通していないが、各国は外貨準備用として使用される。人民元が加わると、各国政府や中央銀行は人民元を外貨準備として持つことになる。人民元の主要国際通貨としての知名度、信頼は上がり、その使用度はさらに国際的に普及することになる。
経済情報会社のブルームバーグによると、人民元がSDRに採用されると、その影響は世界で1兆ドルのドル建て資産が人民元建て資産に変換される可能性があると指摘している。
またバンクオブアメリカ・メリルリンチによると、SDRのなかで人民元はドル、ユーロにつづき全体の構成通貨の13%から14%を占めることになるのではないかと予測している。この13%から14%ということは他の構成通過が占める割合が低くなることを意味する。つまり、米国ドル、ユーロ、英ポンド、日本円などの価値が相対的に低下することになり、中国は世界の金融市場で大きな影響力を持つことになる。